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2013/04/14 (Sun)

加藤一二三『羽生善治論 ――「天才」とは何か』(角川oneテーマ21) 加藤一二三『羽生善治論 ――「天才」とは何か』(角川oneテーマ21) - shanghai将棋日記(仮) を含むブックマーク はてなブックマーク - 加藤一二三『羽生善治論 ――「天才」とは何か』(角川oneテーマ21) - shanghai将棋日記(仮)

書名の通り徹頭徹尾、羽生善治を通じて「天才とは何か」を論じる内容で、これまでの加藤九段の著書とは趣が異なる。

誰もが認める天才が、「自分は天才である」という事実を前提として書いた天才論、という点では一種の奇書とも言えよう。

主に羽生善治と加藤一二三本人を引き比べて論じる形で進行するが、まず加藤自身について、自分が天才と公言したことはないとしながらも、

 ただ、正直に言えば、思ったことはある。

「もしかしたら、自分は天才じゃないか……?」

 タイトル戦、しかも名局で勝ったとき、具体的にいえば、難しい局面で好手、妙手を発見して勝ったときなどに、そう思ったことがあるのは事実だ。

 別に驕ったわけではない。掛け値なしに、虚心坦懐に、謙虚に自分の将棋をみつめた結果、「『天才』と呼んでもいいんじゃないか」

 そう思ったのである。

極めて率直で、同じ天才の中にもなかなかこう書ける人はいまい。そして非常に素朴である。我々ファンがプロの名局を観て「天才だ!」というのと同じような感覚基準で(むろん将棋そのものに対する理解の度合いは全く異なるが)「天才じゃないか」という判断をしている。

一方で、大山康晴名人が名局集に「加藤一二三は大天才である」と書いた事実を引いて、

しかし、大名人であり、大巨匠である大山さんが「加藤は大天才である」といってくれていたのだから、ほんとうにそうであるかはひとまず措くとして、「加藤一二三は大天才である」という前提のもとに、以下、論を進めていくことにする。

加藤=天才の根拠として、大山名人によるお墨付きを挙げているのも興味深い。

上述の通り本書は羽生の特徴について述べた上で加藤が「少なくとも私の場合は~」と自身と比較してみせるという形式が基本になっている。が、むろん他にも将棋界に何人もいる紛れもない天才のエピソードを適宜引く中で、羽生、加藤に加えた第三項に近い扱いになっているのは大山康晴である。これは少し意外だった。

加藤一二三は大山康晴を、将棋の上でも人間的にも苦手としていた、という見方が一般的だと思う。むしろ大山の最大のライバルで対抗派閥(?)の領袖でもあった升田幸三に可愛がられていたのが加藤だったはず。むろん客観的に大山が将棋史上最大の巨人ともいえる存在であることは事実で、加藤が天才説の論拠として自分より上位の権威である大山を引用したのはわかるが、それ以上に明らかに個人的にも加藤の中で大山の存在は大きく、また決してネガティブでない評価をしているんだなということが本書全体から読み取れるのでそこは新鮮だった。

大山以外ではやはり自身と同世代に近いライバルである米長、中原への言及が多く、次いで谷川だろうか。意外にも升田幸三はあまり登場しないという印象。

天才論としては、やはり第一章「羽生は天才か」で、「天才の条件」を真正面から論じているのが白眉。中でも「早指し」に関する考えはいかにも加藤らしく極端である。

 勉強をしている、していないにかかわらず、早く指すことができて、しかも着手が正確で、なおかつ勝つこと――これは、間違いなく天才の共通点である。絶対だ。天才は、盤を見た瞬間に、パッとひらめくのである。もっとも強力な一手、最強の一手が、局面を見た瞬間に浮かんでくるものなのだ。こうした能力は努力したからといって身につくものではない。もって生まれた、並外れた素質としかいいようがない。

 若くして長考型に天才はいない。断言してもいい。子どものころから、一手、一手、考え込んでいたような棋士はかなり将来が危うい。はっきりいって、早いうちに棋士をやめたほうがいいとさえ思う。

確かに「一目で最善手が見える能力」に関してはまさに加藤一二三の才能の最たるもので、河口俊彦老師も秒読みに追われた時の強さについて「加藤一二三こそ天才のなかの天才」と書いている。その加藤がいう言葉は余人には否定しがたい強さがあるが、あえていえば「努力したからといって身につくものではない」「もって生まれた素質」と断言するのは早計だろう。羽生流にいえば「検討を省略して考えなくてもいい手を除いた有力な候補手が直観で浮かぶ」のは経験の蓄積によるものだし、努力で身につくものではない、というのは正確にはどのような訓練でその能力を伸ばせるのかまだわかっていない、ということだと思う。ただ付け加えると、「あまり考えずにどんどん指す子供のほうが伸びる」とは将棋指導の一般論としても言われていることではある。理由はいろいろな説が考えられているようだが。

羽生は「若い頃は才能とは一瞬のひらめきだと思っていたが、努力を継続できることが才能だと思うようになった」という意味のことも言っている。加藤の考える才能は今も前者に近いものだということだろう。

羽生の言葉は、単に才能と実績がある人の体験談であるというだけでなく、彼が自分自身についてもよく思索して考え抜いた上での結論を語っているところにより一層の価値がある。それに比べると、同じ天才でも加藤は天然タイプというか、一般的にイメージされる(?)天才ならではの言葉だと思う。逆にいうと「天才」と「自分の天才を分析する研究者」が同居している羽生はやはり例外中の例外なのだろう。加藤流の「生まれ持っての素質」、羽生自身が考える「努力を継続できる才能」、そして「自分を客観的に分析できる視点」、この三つを兼ね備えているのは羽生だけ、というのが、羽生が突出した存在である理由の現時点での個人的な結論。

では渡辺明とは何者なのか? というのが次の問題なのだが、これはまだ誰も仮説すらほとんど立てられていない段階ではないかと思う。

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2012/05/25 (Fri)

渡辺明監修『ひと目の詰み筋 初級編』(マイナビ将棋文庫SP) 渡辺明監修『ひと目の詰み筋 初級編』(マイナビ将棋文庫SP) - shanghai将棋日記(仮) を含むブックマーク はてなブックマーク - 渡辺明監修『ひと目の詰み筋 初級編』(マイナビ将棋文庫SP) - shanghai将棋日記(仮)

詰将棋の本はいくらでもありますが、多すぎて選ぶのが難しかったりする。

その点、この本は初級者向けとして私の考えたいくつかの基準を全てクリアしています。

コストパフォーマンスがいい

税込1,050円で全768問(!)、ついでに文庫本なので取り回しにも優れています。

網羅性も高い

1手詰から7手詰まで収録と、当分はこれ一冊で大丈夫な内容。

実戦的な問題

詰将棋はパズルであり芸術作品としての側面もあるため、専門誌『詰将棋パラダイス』系の本などでは、盲点を突いた意表の着手や詰め上がりの形などを重視する傾向が強く、特に初心者にとっては棋力向上の訓練には向かないのではないか? と思われるものもあるのですが、本書はあくまで「実戦でよく見かける形ばかり」という編集方針。

ちなみに問題は「東大将棋」が作成したものから厳選だそうです。

素性が確か

渡辺明竜王が監修です。

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2012/05/08 (Tue)

第70期名人戦第3局 第70期名人戦第3局 - shanghai将棋日記(仮) を含むブックマーク はてなブックマーク - 第70期名人戦第3局 - shanghai将棋日記(仮)

ニコニコ生放送による完全中継、観られなかったんですが一日目の解説が加藤一二三九段。

f:id:shanghai:20120509191130j:image

なんで解説者の食事を放送してるのかわかりませんが(笑)、「うな重を食べるひふみん」の映像はなにげに貴重かも。

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2011/11/01 (Tue)

激指 SELECTION 激指 SELECTION - shanghai将棋日記(仮) を含むブックマーク はてなブックマーク - 激指 SELECTION - shanghai将棋日記(仮)

将棋ファンにはお馴染みのソフト『激指』の廉価版(?)が出てたので買っちゃいました。

将棋ソフトは同じブランドでも新しいバージョンほど強くなるので、古いのをライセンシーで安くパッケージしたものが出ることは珍しくありません。だからそういうものだろうと思って、ソフトバンクというのが少々気になったものの買ってみました。

結論からいうとユーザビリティはかなり微妙です(笑。

  • ユーザ登録を完了しないと本来のインストーラが立ち上がらない。
  • インストール先が選択できない。(「Program Files」下固定)

ここまでは明確にソフトバンクのせいでしょうが、まあ仕方ないレベル。

  • 「各種設定」で設定した内容が保存されない。

(追記: コメントで指摘いただきました。Windows7の実行権限の問題だったので管理者権限で実行することで解決済み。)

これがキツい。起動するたびにデフォルトの設定に戻ってるので設定し直す必要がある。

盤の表示サイズとか駒の種類とかって、普通は一度選んだらずっと同じでいいと思うんですが、これだと毎回設定し直さなくちゃいけないんですよね。デフォルトで棋譜読み上げの声が岩根忍、秒読みの声が矢内理恵子になってるのもよくわからない(笑。矢内さんの声はNHKで聞き慣れすぎてるので岩根忍にすると読み上げのイントネーションが関西風(?)で気になるんだよなあ。ちなみにこの二人にバンカナこと板東香菜子女流を加えた三人から選択できます。閑話休題。

あと、たまに設定変更してメイン画面に戻ると駒が全部消えて表示されない(!)というバグがあってこれにも参る。

先に書いた通り、過去の製品をそのままパッケージし直して出したのかと思ってましたがガワの部分はソフトバンクが開発してるんでしょうか? だとするとちょっとこれはないなーと思いました。

ただ初体験の激指の機能そのものはいいですね。

最大の売りであろう「棋譜解析」は局面ごとの形勢評価を数値化して評価するシステム。「疑問手」「好手」などにはマークが付き、負けると「敗着はおそらく○手目の▲○○です」などと指摘してくる(笑。「検討モード」は候補手とその評価を表示、詰めろや詰みがある場合はその旨も表示されるので、簡単な詰みを見逃していることがいかに多いか思い知らされます。「詰みチェック」は先手玉後手玉にそれぞれ詰みがあるかどうかを、高速または最短手順の条件で探索。

要するに検討に使う機能が充実しているのが将棋ファン必携(?)と言われる所以。ソフト相手に指していると感想戦ができないのが最大の難点ですが、それを補う機能はまさに勉強に必須といえそうです。

それだけに使いづらい部分が惜しいので、高いけどちゃんと本家マイコミから出てるのを買おうかしら……。携帯ゲーム機でも出てますが、ちゃんと勉強する時はPCでじっくりやりたいんですよね。

   

通りすがり通りすがり2012/01/22 00:40各種設定も各モードの記録も管理者権限で起動するようにしたらできましたよ。

shanghaishanghai2012/02/16 14:03情報ありがとうございます。それくらいは試してみるべきでしたね……。久しぶりに起動してみます。

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2011/10/14 (Fri)

第27期 竜王戦 第1局 第27期 竜王戦 第1局 - shanghai将棋日記(仮) を含むブックマーク はてなブックマーク - 第27期 竜王戦 第1局 - shanghai将棋日記(仮)

http://live.shogi.or.jp/ryuou/index.html

渡辺竜王に丸山九段が挑戦する第1局。以下、引用は全て中継棋譜コメントより。

将棋そのものは結果的に71手の短手数で、異例の早い時間帯(記録によると14時14分投了)に終局しましたが、別の意味で見どころの多い対局でした。

まず正立会人が加藤一二三九段。これだけで中継観戦する楽しみは倍増と言っていいくらい(笑。

序盤、戦型が角換わりから先手渡辺竜王の棒銀模様になると、もちろん棒銀といえばこの人、黙ってはいられません。

「棒銀なんですね。うん、棒銀なんだな」(加藤一二三九段)

期待通りのリアクションです。

羽生二冠はタイトル戦では立会人の得意戦法を意識して戦型を選ぶという説がありますが、渡辺竜王がそのお株を奪う遊び心を見せたのでしょうか。それはないと思いますが(笑。

続いて封じ手。

いつだったか、やはり加藤九段が立会人を務めた際に封じ手を開封し、作法通り読み上げる前に対局者(封じたのではない側)へ示して見せ、後で「あれは私の新手です」とコメントしていたことがありました。今回は一体何が起こるのか?

立会人の加藤九段が封じ手を開封。1通目を開いて中身を確認し、訝しげな表情。指し手を示す前に、首をかしげながら2通目も開封した。

やはり合点のいかない様子で、封じ手をした渡辺に「すみません、どう指すんですか?封じ手はどこに?」。渡辺が口頭で伝え、「あ、あ、はい。こうね、歩で取る。はい、封じ手は▲8五歩です」と加藤九段。

控え室に戻ってきた加藤九段は、「指し手を示す矢印が駒と重なっていて、見えにくかったです。符号は書かないものなんですね。ちなみに封じ手を書かなかったら反則ですか?ひゃー、驚愕。しかしこれはこれで問題なしなんですね」。

解読できなかった(笑。

これには、封じた当人の渡辺竜王も慌てたのではないでしょうか。厳密に判定すれば、封じ手の記入が不正なら反則手で負けにもなりかねないところです。

私の知る限り、封じ手用紙は、その時点での局面図に、着手する駒を丸で囲んで、行き先を矢印で示す、という風に記入されるはず。

推測するに、この時の封じ手は直前の△8五歩に対して▲8五同歩ですから、歩がすぐ一つ前へ移動、しかも相手の歩がいるマスなので、矢印が非常に見えにくかったということでしょうか。でも赤で書くのではなかったかな。

「符号は書かないものなんですね。」と言ってるので、加藤九段自身がタイトル戦を戦っていた頃の昔は、符号つまり「▲8五歩」のように記述していたということでしょうか。ちょっと興味があります。

ちなみに封じ手は定刻(この場合は18時)をすぎてから最初の着手を封じるので、その時点の局面を、記録係が封じ手用紙に作図します。たまに、定刻前に手番を持っている側の対局者が記録係に声をかけて早めに用紙を準備させたりすることもあるようです。これは事実上「もう定刻まで指さない」という意思表示なのでちょっと不思議な感じもします。閑話休題。

続いて二日目の様子。

控え室の加藤九段が「そこで▲7四銀がいい手になりそうなんだな、うん。うん?はひい、はひふへほ。▲4六角に△7五歩ではなく△8五金があるのか。そうか、これはえらく悩ましい。一分将棋だったら△8五金に対応できない。おでこにペッタンコしてもわからないぞ」。

「そうかそうか、難しい手だな。私がこうやると?こうこう、かっこかっこ、かきくけこ。なんとかどうにか、いや桂打ちが良い手でね、次の手が思い浮かびません。まいったぴですね」(加藤一二三九段)

「はっはっは。そうですね、まいったぴでしょうか」(屋敷伸之九段)

「はひい、はひふへほ」とか「こうこう、かっこかっこ、かきくけこ」とか、観戦記者が作ってるんじゃないか? と疑いたくなりますが(笑)、いくら加藤九段とはいえ本当にこんなことを言ってるんでしょうか。屋敷九段もいい味出してる。隣で適当に応じる姿が目に浮かぶようです(笑。

しかも、その直後に、

ふとモニターに目をやると、丸山が盤面を指差して何か話している。どうやらここで投了したようだ。突然のことで控え室もびっくり。私服で検討していた加藤九段は、和服に着替えるため大急ぎで部屋を出て行った。

突然の投了!!

局面そのものは投了もやむなしの形勢とはいえ、まだこの後の時間帯にテレビ中継や大盤解説会などのイベントが企画されており、タイトル戦のクライマックスは二日目の夕刻以降という暗黙の期待もあり、心理的にも投了はしづらいところ。普通は控室は「終局近し」という雰囲気を読み、報道陣も対局室に突入する準備を整えて待機してたりするものですが、現場も完全に虚を突かれた様子がコメントから伝わってきます。立会人って途中で着替えたりしてるものなんですね。初めて知った。

しかし、丸山九段といえば、以前にもA級順位戦で対局が深夜に及んだ際、おもむろに用意のカロリーメイトを取り出して食べ始め、相手が投了した時にまだ咀嚼していたという、いわゆる「モグモグ投了」、また同じく順位戦の長丁場で、頭部に冷却シートを貼ってクールダウンを試みた「冷えピタ新手」など、数々の事件で知られる、よくいえばマイペース、ある意味で将棋以外のことには頓着しないタイプの棋士です。

この誰もが予想だにしないタイミングでの投了劇は、ある意味この対局を通じて最も丸山らしさが発揮された瞬間だったのではないか。最後に見せ場が用意(?)されているところはさすがトップ棋士、と妙なところで感心してしまいました。

追記

渡辺竜王のブログで封じ手の件に言及が。

http://blog.goo.ne.jp/kishi-akira/e/bf955382220e0378895bf74dfda07d18

見かねた解説の森下九段がフォローに入ってるのがいいですね(笑。

羽生とひふみんは仲がいいですが、渡辺竜王とひふみんのやりとりはレアなのではないでしょうか。

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2011/04/18 (Mon)

最近の将棋マンガ 最近の将棋マンガ - shanghai将棋日記(仮) を含むブックマーク はてなブックマーク - 最近の将棋マンガ - shanghai将棋日記(仮)

嬉しいことにまた将棋マンガが多くなってきたので、まとめて紹介してみます。

柴田ヨクサル『ハチワンダイバー』(週刊ヤングジャンプ)

将棋監修:鈴木大介八段。

TVドラマ化もされて、現在の将棋マンガブーム(?)の呼び水になったのかもしれない作品。

奨励会上がりの真剣師が主人公だが、ヒロインが「アキバの受け師」と呼ばれるメイドで、後半は文字通り命を賭けて将棋を指す秘密組織「鬼将会」との戦いになるなど、物語は荒唐無稽。盤上に没入した状態を「ダイブ」という必殺技として描いたり、負けた対局者が本当に死んだりと、将棋というゲームの凄さ、恐ろしさをマンガ的に表現するのが主題になっている。

一方で、作中の対局は逆転再逆転などストーリー展開に合わせて監修の鈴木八段がオリジナルの棋譜を作成しているという本格派。また、作者自身が少年時代に奨励会入会の寸前まで行った棋力の持ち主で、この連載が始まってからも席上対局で渡辺竜王に飛車落ちで勝利、藤田綾女流初段にも勝つなどアマチュア強豪と言ってよい実績を残しており、将棋マンガの作者の中では間違いなく最強だろう。作中では雁木ベースで相手に合わせて変化するオリジナルの戦型「ハチワンシステム」も描いていて、説得力は抜群だと思われるのだがすでに書いた通り演出の力点が将棋の内容に置かれていないのが勿体なくもある。

監修の鈴木大介八段をモデルにした主人公の師匠のプロ棋士「鈴木八段」も登場するが、滅法格好良い(笑。

羽海野チカ『3月のライオン』(ヤングアニマル)

監修は先崎学八段。

大ヒット作品『ハチミツとクローバー』の次回作ということで当初から将棋業界(?)以外からも注目されていましたが、期待通りの名作です。

家族を事故で亡くして、養父の内弟子から史上五人目の中学生棋士になった少年が主人公。養家に馴染まず、自活の手段として将棋を指していた主人公が、次第に周囲に対しても将棋に対しても前向きになっていくという話。

登場するプロは全員、架空の棋士ですが、実在のモデルがハッキリわかるキャラも多いのでそれも面白い。将棋というゲームそのものよりは、引退を目前にした老棋士や心身ギリギリに追い詰められながら戦うトップ棋士など、様々な棋士の姿を通じて「プロの世界」を描いている。その意味ではプロの将棋界を一番それらしく描いているマンガと言ってよいと思う。

今のところ主人公は五段に留まっているが、最終目標となるであろう羽生モデルの天才棋士も登場しているので、相当長く楽しめる作品になりそう。

作中の棋譜は過去のプロの名局譜から監修の先崎八段の紹介でセレクト、ときどき創作しているものもあるようです。

青木幸子『王狩』(イブニング)

棋譜指導:飯島栄治七段。

直観像記憶(作中では「完全記憶」)を持つ小学生の女の子が主人公。他にも数人の女子を含む同年代のライバル達を中心に奨励会での戦いを描く。まだ始まったばかりだが、将棋連盟会長や「双天」と呼ばれる突出した二人のトップ棋士の存在など将棋界の構図はある程度見せつつ、奨励会を高校野球のようなアマチュアスポーツとして興行化しようと構想する人物も登場しており、「初の女性棋士誕生なるか」というキャッチーな話をどう展開するのか気になるところ。

将棋の描き方はよくも悪くも普通で、対局を「出口の見えない迷路」「お互い武器を手にしての戦い」として象徴的に描くその絵面がちょっと浮いていることもある。主人公の能力「完全記憶」とそれに基づく「超直感」も今のところうまく伝わるように描かれていないように感じる。これは出たばかりだし、全体的にこれからに期待というところか。

南Q太『ひらけ駒!』(モーニング)

将棋に夢中な小学生の息子を、母親の視点から描いた日常系(?)マンガ。

実際に作者の息子が将棋にハマったのを契機にして描かれ、大部分はほぼ実話に近いようだ。

イベントなどのシーンに登場する棋士、女流棋士はそのまま実名で、これまで田丸昇、深浦康市、羽生善治、高橋和、上田初美らが登場。一方、将棋教室講師の奨励会員は明らかに架空の人物になっているのは配慮なのか、不明。

一年近く原稿を描きためてから連載開始したのだそうで、今のところは主人公の宝少年が道場に通ったり大会に出たりして、母親は息子の影響でプロ棋士のミーハーなファンになったり、自分も将棋を指すことに興味を持ち始めたりしているところ。宝くんは小学四年で二段となかなかの上達速度のようなので、今後の展開は彼次第といった感じでしょうか。

私は道場通いや大会出場の経験はないのでその様子も興味深いし、今まで全く将棋に興味がなかった母親の視点もよくわかるので面白い。

それから小学生男子と母親のやり取りもリアルでいい。息子視点の描写と、彼が家に帰ってから母親に報告する内容の落差や、むしろ母親のほうが息子の将棋の勝敗に熱くなったり親なりに気を遣ったのに本人は無頓着だったり、いかにも小学生男子らしい大らかさと母親の思惑のズレが実によく描けている。息子と母親ってこんな感じだよなーと。

今のところ将棋の内容はほとんど見せていないけれども、マンガとしては文句なしに面白い。

にしても語り手のママが美人すぎるだろうと言いたいところだが、南Q太は本当にこんな感じのスラッとした美人だから困る。

   

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2011/03/23 (Wed)

門倉啓太三段が四段昇段 門倉啓太三段が四段昇段 - shanghai将棋日記(仮) を含むブックマーク はてなブックマーク - 門倉啓太三段が四段昇段 - shanghai将棋日記(仮)

http://www.shogi.or.jp/topics/2011/03/post-392.html

なかなか奨励会員の情報までは目が届かないですが、なぜ今回の新四段に注目したかというと、門倉三段はNHK杯将棋トーナメントの対局で記録係を務めているため、TVですっかりお馴染みなんですね(笑。新年の特番では司会もやっていたはず。

せっかくなので、これからも門倉新四段に注目し、応援していきたいと思います。

今期三段リーグの結果はこちら。

http://www.shogi.or.jp/kisen/shourei/sandan/48/index.html

連盟公式サイトで、奨励会の成績も公開されていたんですね。

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2011/02/06 (Sun)

第36期棋王戦第1局 第36期棋王戦第1局 - shanghai将棋日記(仮) を含むブックマーク はてなブックマーク - 第36期棋王戦第1局 - shanghai将棋日記(仮)

http://live.shogi.or.jp/kiou/

冒頭から双方居玉のまま大乱戦、手数は89手までと短いですが最初から最後まで見応えのある将棋でした。

そして、ニコニコ生放送で開始から終局まで生中継という初の試み。

ニコニコ生放送:第36期棋王戦「久保利明-渡​辺明」第1局 (放送終了)

http://live.nicovideo.jp/watch/lv39183688

終局時点でのべ12万人(!)近い視聴者が集まっていました。

対局室真上からのカメラで盤を映す画面をベースに、同時開催の「宇都宮将棋フェスタ」大盤解説会場との二元中継。時間によって将棋の歴史の解説や初心者向けの駒の説明、用具や対局の作法の実演つき解説など、将棋を知らないニコニコ動画ユーザにもちょうどいいプログラムだったのではないかと。もちろん対局の解説も、戸部六段や佐藤天彦五段、片上六段、佐藤康光九段らが交代で大盤解説をした他、米長会長は自身のホームページ上で、そして中継担当の西尾明五段による配信者コメントでも行われ非常に充実していました。

私はBSや専門チャンネルでのTV中継も観たことがないし、もちろん対局会場へ現地観戦に行ったこともないので、タイトル戦の一日を最初から最後まで観るのは初めてで、実際に時間の許す限り張り付いて観続けていました。とてもエキサイティングな企画だったと思います。

当日になって知った企画ですが、ネット中継、そしてニコニコ生放送のフットワークの軽さを物語る素晴らしい試みだったと思います。どういう経緯で実現したのかわかりませんが、是非またやってほしいですね。

なんと、終局直後に対局者二人が大盤解説会場に登壇し、ポイントの局面の解説にコメントするという(5分間程度)一幕もありました。特に敗者の渡辺竜王には酷だったかもしれず、むしろ感想戦の様子を放送し続けることは出来なかったのかな、とも思いました。まあ、それは欲張りすぎですか。

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2011/01/10 (Mon)

米長会長出陣 米長会長出陣 - shanghai将棋日記(仮) を含むブックマーク はてなブックマーク - 米長会長出陣 - shanghai将棋日記(仮)

少し前ですが、中央公論の誌上に米長会長と、ご存知梅田望夫氏との対談記事が公開されました。

次は私がコンピュータと対局します!

http://www.chuokoron.jp/2010/12/post_49.html

見出しにある通り、清水市代がコンピュータに敗れたのを受け、話の流れで米長会長が次は自分が対局すると宣言。

なるほど、次は男性棋士だろうとは思ったけど、引退棋士=会長自身という発想はなかったなあ。

ということで、現在の会長の棋力は如何? というのが気にかかっていたんですが、昨日、とちぎ将棋まつりで席上対局があったようです。

http://www.tochigi-shogi.net/matsuri/

しかも相手は加藤一二三九段。「奇人対変人」再び、です(笑。

米長会長、前哨戦にも余念がない。

http://8154.teacup.com/yonenaga/bbs/2095

加藤さんに「9日の宇都宮対局、私が負けたら会長辞任、加藤さんが負けたら引退。当日返事を聞かせてもらいたい」。さあ、面白い。

これを受けて中継棋譜の開始コメント欄より、

【将棋まつり会場にて】

米長「加藤さんが負けたら引退という話がありますが」

加藤「まあまあ、お正月ですから、穏やかに」

米長「加藤先生がおっしゃるなら(がっちり握手)(会場拍手)」

本当にこの二人の組み合わせは面白い(笑。

結果は後手米長会長の勝ち。早指しのイベント対局とはいえ現役C1級の加藤一二三九段を破って米長健在なりとアピールしたのも、上記の記事からの流れを意識しているのではないかな? というのは穿ちすぎでしょうか。引退しても、席上対局などの機会はそれなりにあるものなんでしょうかね。今まであまり気にしたことがなかったこともあり、よく知らないのですが。

棋譜はこちら。

http://live.shogi.or.jp/event/tochigi/kifu/tochigi110109-03.html

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2010/09/04 (Sat)

『橋本崇載の勝利をつかむ受け』(NHK出版) 『橋本崇載の勝利をつかむ受け』(NHK出版) - shanghai将棋日記(仮) を含むブックマーク はてなブックマーク - 『橋本崇載の勝利をつかむ受け』(NHK出版) - shanghai将棋日記(仮)

2009年4月期のNHK将棋講座をまとめた単行本。

当時の放送を観ていても、私の観た中では一番分かりやすい講座だったと思います。最近ちょうど受けの勉強がしたかったところで思い出したので買ってみました。初級者向けだと思いますが、大きく、一手違いの終盤で手を稼ぐ受け、中盤で優勢を築く受け、という構成でとても具体的でわかりやすいです。ハッシーはかなりの教え上手かも。他にも本を出してないのかと調べてみましたが、今のところこれだけなんですね。

また税込1,050円と安いのもありがたいです。さすが天下のNHK出版。

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